相続の話し合いで意見が分かれると、「財産の分け方すべてが争いになってしまった」と感じることがあります。
けれど、落ち着いて整理してみると、意見が分かれているのは一部分だけということも少なくありません。
今回ご紹介するのは、姉妹お二人からご相談をいただいた相続のお話です。順調に進むと思われた話し合いの途中で、生前贈与(いわゆる特別受益)の話が持ち上がりました。
このご家庭では、合意できている部分を先に整理し、意見が分かれた生前贈与の部分だけを弁護士にご相談いただくことで、話し合いが2〜3回でまとまりました。
※事例は、個人が特定されないよう内容を一部変更しています。金額は概算です。
姉妹お二人からのご相談

お母さまが亡くなり、長女さま・次女さまのお二人から相続のご相談をいただきました。お父さまはすでに亡くなっています。相続人は姉妹お二人で、法定相続分はそれぞれ2分の1です。
主な財産は次のとおりでした。
| 財産 | 金額 |
|---|---|
| 現金 | 1,800万円 |
| 不動産 | 2,000万円 |
| 長女さまへの生前贈与 | 約1,200万円 |
| 生前贈与を含めた合計 | 約5,000万円 |
遺言書はありませんでした。お母さまは生前、「姉には十分贈与しているから、残りのお金は妹に渡したい」と話していた、とのことです。
当初は、順調に進むと思われていました
不動産は「売却して、お金で分ける」ことで、お二人の考えが一致していました。
お二人そろってのご相談でもあり、大きな問題はないように見えていました。
次女さまから、生前贈与の話が

話を進める中で、次女さまから個別に、「お姉さまが生前に受けた約1,200万円の贈与を、相続でどう考えるのか」というお話が出てきました。
このように、相続人の一部が生前に受けた大きな贈与などを、遺産の分け方でどう扱うかという問題を、一般に「特別受益(とくべつじゅえき)」といいます。
特別受益にあたるかどうか、どのように考慮するかは、法律の判断が必要になる部分です。
「全部まとめて」話し合うと、どうなるか
意見が分かれると、財産全体が争いの対象のように見えてしまいます。
けれど、合意できている部分まで一緒に争いの対象にすると、
- 話し合う項目が増え、まとまるまでに時間がかかりやすい
- 専門家に依頼する範囲が広がり、その分、費用もかかりやすい
- 合意できていた部分まで、こじれてしまうおそれがある
といったことが起こり得ます。
争点を整理してから、弁護士へ

そこで、次の順番で整理しました。
- ① 合意できている部分を先に確認する(不動産は売却して分ける)
- ② 話し合うべき争点を一つに絞る(長女さまへの生前贈与の扱い)
- ③ その部分だけを、弁護士にご相談いただく
当社が行ったのは、財産と「合意できている点・意見が分かれている点」の整理と、生前贈与の部分について弁護士へお繋ぎしたところまでです。特別受益についての法的な判断は、弁護士の領域です。
話し合いは2〜3回で収まりました
争点が一つに絞られたことで、何について話し合えばよいかがはっきりしました。
そのうえで、この部分を弁護士に入ってもらって争う場合、費用と時間が大きくかかることもご家族が理解され、調停などにはならず、2〜3回の話し合いで収まりました。
専門家との役割分担
| 内容 | 担当する専門家 |
|---|---|
| 生前贈与(特別受益)の法的な判断、話し合いがまとまらない場合の対応 | 弁護士 |
| 不動産を売却する前の名義変更(相続登記) | 司法書士 |
| 売却や相続にかかる税金 | 税理士 |
弁護士は、法律の判断が必要な問題を解決するための大切な専門家です。今回の事例は、弁護士への依頼を否定するものではありません。
大切なのは、相談する前に「どこが本当の争点なのか」を整理しておくこと。そうすることで、相談する内容がはっきりし、話も進めやすくなります。
この事例から学べること
相続で意見が分かれても、争点は一部分だけということが多い。
合意できている部分と、話し合いが必要な部分を分けて考える。
法的な判断が必要な部分は、弁護士に相談する。
遺したい分け方があるなら、遺言書を準備しておく。遺言書がないと、生前の言葉だけでは分け方が決まらないことがあります。
ご自身の場合に確認していただきたいこと
- □ 相続人の中に、生前に大きな贈与を受けた人はいますか
- □ その贈与の時期・金額・目的が分かる資料(通帳の記録など)はありますか
- □ 遺産のうち、すでに分け方で合意できている財産はどれですか
- □ 本当に意見が分かれているのは、どの財産・どの点ですか
- □ 亡くなった方の遺言書はありますか
- □ 専門家に相談する場合、相談したい範囲ははっきりしていますか
おわりに
相続で意見が分かれたとき、「もう全部、専門家に任せるしかない」と感じることもあると思います。
けれど、その前に一度、「どこまでは合意できていて、どこからが話し合いの必要な部分なのか」を整理してみてください。それだけで、話し合いの進み方が変わることがあります。
特別受益にあたるかどうかなど、法的な判断が必要な部分は、必ず弁護士にご相談ください。弁護士の費用は事務所ごとに異なるため、依頼の前に相談の範囲と見積もりを確認しておくと安心です。
何から整理すればよいか分からない方は、お気軽にご相談ください。
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参照した公的情報
- e-Gov法令検索「民法」第903条(特別受益者の相続分)
- 裁判所「遺産分割調停」
※2026年10月時点で確認したものです。
